現在Beelink U59でNASを構築してして運用していますが、このときに行ったセットアップ内容をまとめておきたいと思います。
自分へのメモも兼ねて一通り書いたので、長文になります。
ディスク構成
デバイス | 種類 | 用途 |
---|---|---|
/dev/sda | 2.5インチHDD 2TB | NAS領域のデータ用 |
/dev/sdb | M.2 SATA SSD 128GB | OS含むシステム用 |
※Beelink U59の2.5インチスロットは厚さ7mmまで対応してます。9.5mmのものは入りませんので注意してください
導入
Ubuntuのインストールとディスク構築方法はここでは省略します。
また、Ubuntu以外でもDebian系のディストリビューションなら同じ手順で構築できると思います。
OSインストール後初期ディスク構成
Ubuntuインストール時に"ディスクを削除してUbuntuをインストール"を選択したので、/dev/sdbは自動で設定されました。
/dev/sdaはディスク全体をNAS用としてExt4でフォーマットして、/nasディレクトリを作りそこにマウントしてます。
フォーマットとマウント定義はUbuntu標準の"ディスク"アプリで行いました。
デバイス | マウントポイント | フォーマット | サイズ |
---|---|---|---|
/dev/sdb1 | /boot/efi | FAT32 | 537MB |
/dev/sdb2 | / | Ext4 | 128GB |
/dev/sda1 | /nas | Ext4 | 2TB |
/nasディレクトリはrootで作成
sudo mkdir /nas
Samba
インストール
sudo apt install samba
サービス開始、自動起動設定
sudo systemctl start smbd sudo systemctl enable smbd
アクセスユーザ設定
SambaにアクセスしたいユーザがUNIXユーザにいない場合は作成。
ここでは仮にユーザ名をuser1とする。
sudo adduser user1
Sambaパスワード設定
sudo pdbedit -a user1
Sambaのパスワードは独自に管理しているため、すでに存在するUNIXユーザでもパスワード設定が必要。
共有フォルダ用のディレクトリ作成。
ゲスト等だれてもアクセスできる共有フォルダ
ディレクトリの所有者をroot、権限を777とする。
ここでは仮に共有フォルダ名をshareとする。
sudo mkdir /nas/share sudo chmod 777 /nas/share
特定のユーザがアクセスできる共有フォルダ
ディレクトリの所有者をアクセスユーザ、権限を700とする。
ここでは仮にアクセスユーザをuser1、共有フォルダ名をprivate_user1とする。
sudo mkdir /nas/private_user1 sudo chown user1 /nas/private_user1 sudo chmod 777 /nas/private_user1
ワークグループ設定
Sambaの設定でワークグループはWORKGROUP
これを変更する場合は設定ファイル /etc/samba/smb.conf の以下の行を変更する
workgroup = WORKGROUP
共有フォルダ設定
/etc/samba/smb.conf に共有フォルダ毎の設定を追加する
詳細な説明は省略するが、基本的に[]内に共有フォルダ名、pathにサーバ内のディレクトリを設定する
ゲスト等だれてもアクセスできる共有フォルダ
ここでは仮に共有フォルダ名をshareとする。
/etc/samba/smb.conf の最後に追加。
[share] comment = share folder path = /nas/share writable = yes guest ok = yes guest only = yes
guest only = yes を設定することによって、すべてのアクセスがnobody:nogroupになり、ファイルを作成した他のユーザが更新や削除ができないといったことがなくなる。
特定のユーザのみアクセスできる共有フォルダ
ここでは仮に共有フォルダ名をprivate_user1、アクセス可能なユーザをuser1とする。
/etc/samba/smb.conf の最後に追加。
[private_user1] comment = only user1 path = /nas/private_user1 writable = yes valid users = user1
設定後Samba再起動
sudo systemctl restart smbd
転送速度チューニング
デフォルト状態では転送速度が遅いので少しチューニングしてみた。
ここの設定は環境によるので各項目の説明は省略して参考程度に書いておく。
以下の設定を /etc/samba/smb.conf の[global]セクションに追加
[global] unix charset = UTF-8 dos charset = CP932 client min protocol = SMB2 log level = 1 socket options = TCP_NODELAY
wsdd
Windows10でデフォルトでSMB1.0のプロトコルが無効化され、Web Service Discoveryを使用するようになり、このままではWindowsのネットワーク共有に表示されなくなった。
これを解決するために Web Service Discovery host daemon (wsdd) を導入する。
/etc/apt/sources.list.d/wsdd.list作成
↓内容
deb https://pkg.ltec.ch/public/ bullseye main
pgpキーを登録してインストール
sudo apt-key adv --fetch-keys https://pkg.ltec.ch/public/conf/ltec-ag.gpg.key sudo apt update sudo apt install wsdd
サービススタート、自動起動
sudo systemctl start wsdd sudo systemctl enable wsdd
NAS基本機能構築完了
ここまででNASとしての基本機能は完了。
以降の項目は個人的にやりたいことをやったので、付加機能として書いておく。
bcache導入
システム部分は128GBのSSDを使用しているが、この段階で10GBほどしか使用していない。
今後多少のサーバ機能を追加してもそんなに急激に増えるとは考えられない。
これでは非常にもったいないので、半分の64GBをHDDのキャッシュとしてSSHD的な動作を行えるbcacheを導入することにした。
まずはインストールメディアとして使用したUSBメモリからライブブートし、"ディスク"アプリを使用して/dev/sda1を64GBに縮小し、新たに64GBのExt4でフォーマットした領域を確保した。
このディスク構成からの設定を行う。
デバイス | マウントポイント | フォーマット | サイズ |
---|---|---|---|
/dev/sdb1 | /boot/efi | FAT32 | 537MB |
/dev/sdb2 | / | Ext4 | 64GB |
/dev/sdb3 | 未割当て | Ext4 | 64GB |
/dev/sda1 | /nas | Ext4 | 2TB |
この構成で /dev/sda1 をバックディスク、/dev/sdb3 をキャッシュディスクとして扱う
インストール
sudo apt install bcache-tools
ファイルシステムのメタデータをクリア
sudo wipefs -a /dev/sda1 sudo wipefs -a /dev/sdb3
bcache作成
sudo make-bcache -B /dev/sda1 -C /dev/sdb3
正常に作成できた場合はデバイスファイル /dev/bcache0 が作られている。(0の部分は連番)
マウント定義
まず/dev/bcache0のuuidを取得
blkid /dev/bcache0
/etc/fstabを編集
元々/nasのマウント定義のデバイス部分が "/dev/disk/by-uuid/(UUID)"の形式だったのでこのUUIDを書き換えるだけにして他のパラメータはそのまま使うことにした
仮に/dev/bcache0のUUIDを14bb71b8-a012-47fb-8290-XXXXとする
/dev/disk/by-uuid/14bb71b8-a012-47fb-8290-XXXX /nas auto nosuid,nodev,nofail,x-gvfs-show 0 0
/nasをアンマウント、マウントするのも良いが、一旦再起動
sudo reboot
再起動したらマウント確認
mount | grep nas
↓
/dev/bcache0 on /nas type ext4 (rw,nosuid,nodev,relatime,x-gvfs-show)
キャッシュモード
cat /sys/block/bcache0/bcache/cache_mode
現在は[writethrough]となっていた。
電源切断時のデータ損失が怖いので、そのままとする。(writethroughはファイル更新時に遅延なしにHDDも更新される)
評価
まだキャッシュにあるデータが少ないせいか、そんなに変わらないが多少早くなった気がする。
PC無線LAN-NAS有線LANの環境で試したので、ディスクアクセス速度より転送速度のほうがネックになってそう。
小さいファイルの連続アクセスは快適になった気がする。
バックアップ
外付けHDDにNAS領域をバックアップすることにした。
HDDはWindowsでも読めるように、Windows上でNTFSでフォーマットしたものを使用。
マウント
/media/backupにマウントするように定義
マウントポイント作成
sudo mkdir /media/backup
uuidを取得
USBディスクを接続して"ディスク"アプリで確認したところ/dev/sdd1と判明したので、これのUUIDを取得
blkid /dev/sdd1
接続する際にデバイス名が変わる可能性があるので、UUIDでマウント定義をする
/etc/fstabに追加
仮に/dev/sdd1のUUIDをB6149A52149AXXXXとする
UUID=B6149A52149AXXXX /media/backup/ ntfs auto,nosuid,nofail,user_id=0,group_id=0,default_permissions,allow_other 0 0
USBを接続して起動すると認識されるが、起動中に接続してマウントされない場合はマウントコマンドを実行
sudo mount /media/backup
バックアップスクリプト
Sambaでシェルを編集できるように定義
管理系のファイルを置くディレクトリを作成
sudo mkdir /nas/admin_tools sudo chmod 777 /nas/admin_tools
とりあえず誰でもアクセスできる共有フォルダとする
/etc/samba/smb.conf の最後に追加。
[admin_tools] comment = admin tools path = /nas/admin_tools writable = yes guest ok = yes guest only = yes
設定後Samba再起動
sudo systemctl restart smbd
バックアップスクリプト作成
今回作成したPythonのスクリプトを書いておきます。
ソースの始めの方にあるfoldersの配列定義部分にバックアップ対象の/nas以下のディレクトリ名を書いてください。
folders = [ "share", "private_user1", ]
↑
この部分
バックアップスクリプトのソースファイル
ファイル名は"/nas/admin_tools/daily_backup.py"で保存してください。
import datetime import subprocess import os # バックアップする対象 folders = [ "share", "private_user1", ] # logsフォルダを除外するバックアップする対象 exclude_log_folders = [ "admin_tools", ] dt = datetime.datetime.now() d = dt.strftime('%Y%m%d_%H%M%S') backup_tool_dir = "/nas/admin_tools" nas_dir = "/nas" dist_dir = "/media/backup/nas" backup_delete_dir = "/media/backup/backupfiles/backup_" + d log_dir = backup_tool_dir + "/logs/" + d[:6] + "/" + d[:8] os.makedirs(log_dir, exist_ok=True) # mountチェック check = subprocess.run("mount | grep backup", shell=True, capture_output=True, text=True) if "media" not in check.stdout: log_file = log_dir + "/" + d + "_error.log" command = "echo \"disk mount error\" > " + log_file subprocess.run(command, shell=True) exit() # 続行 # folders for f in folders: target_dir = nas_dir + "/" + f log_file = log_dir + "/" + d + "_" + f + ".log" command = "rsync -avh --delete --exclude=\"*.DS_Store\" --exclude=\"._*\" --backup --backup-dir=\"" + backup_delete_dir + "\" --log-file=\"" + log_file + "\" " + target_dir + " " + dist_dir subprocess.run(command, shell=True) # exclude_log_folders for f in exclude_log_folders: target_dir = nas_dir + "/" + f log_file = log_dir + "/" + d + "_" + f + ".log" command = "rsync -avh --delete --exclude=\"*.DS_Store\" --exclude=\"._*\" --exclude=\"logs\" --backup --backup-dir=\"" + backup_delete_dir + "\" --log-file=\"" + log_file + "\" " + target_dir + " " + dist_dir subprocess.run(command, shell=True) command = "chmod -R a+rw " + backup_tool_dir + "/logs/" + d[:6] subprocess.run(command, shell=True)
更新や削除されたファイルは/media/backup/backupfiles以下の日時別ディレクトリに保存される。
この処理が不要な場合は、rsyncコマンドを定義している箇所(command = "rsync〜の部分)から"--backup"を削除する。
ubuntu上で作成した場合は権限変更をする
chmod 777 /nas/admin_tools/daily_backup.py
cron登録
バックアップスクリプトの実行をcronに登録する。
毎日4時に実行するように登録した場合を書く。
cronはrootで実行するようにする。
sudo crontab -e
↓追加する内容
# backup daily 0 4 * * * /usr/bin/python3 /nas/admin_tools/daily_backup.py
ログファイル
バックアップスクリプトが実行されるとログが/nas/admin_tools/logs/(日時)に保存される。
Netatalkサーバ
MacのTimeMachineのバックアップ先として使用できるようにnetatalkを導入
最大500GBを使用できるように設定
インストール
sudo apt install netatalk
メディアファイルを置くディレクトリ
/nas/timecapsuleに置くとする
sudo mkdir /nas/timecapsule sudo chmod 777 /nas/timecapsule
設定ファイル編集
/etc/netatalk/afp.conf を編集
割と短いので全文載せます
; ; Netatalk 3.x configuration file ; [Global] ; Global server settings mimic model = TimeCapsule6,106 mac charset = MAC_JAPANESE ; [Homes] ; basedir regex = /xxxx ; [My AFP Volume] ; path = /path/to/volume [nas timecapsule] path = /media/timecapsule time machine = yes vol size limit= 500000 valid users = user1 unix priv = yes
サービス開始、自動起動設定
sudo systemctl start netatalk sudo systemctl enable netatalk
DLNAサーバ
NAS製品によくあるDLNAサーバの機能も欲しので、手軽なminidlnaを導入
インストール
sudo apt install minidlna
サービス開始、自動起動設定
sudo systemctl start minidlna sudo systemctl enable minidlna
メディアファイルを置くディレクトリ
/nas/dlnaに置くとする
今回は動画、画像、音楽ファイルの置く場所を区別しない
sudo mkdir /nas/dlna sudo chmod 777 /nas/dlna
とりあえず誰てもアクセスできる共有フォルダとする
/etc/samba/smb.conf の最後に追加。
[admin_tool] comment = dlna path = /nas/dlna writable = yes guest ok = yes guest only = yes
設定後Samba再起動
sudo systemctl restart smbd
DLNA設定
/etc/minidlna.conf を編集する
media_dirを変更
media_dir=/nas/dlna
リストの自動更新を有効
inotify=yes
(コメントの#を削除するだけ)
自動更新時間を1分毎に変更
notify_interval=60
(コメントの#を削除して値を変更)
設定後minidlna再起動
sudo systemctl restart minidlna
WEBサーバ
ちょっとしたメモをウェブ上におけると便利だと思い、WEBサーバを導入
始めは慣れているApacheと思ったが、少しでも軽量にしたくてnginxを使うことにした
インストール
sudo apt install nginx
サービス開始、自動起動設定
sudo systemctl start nginx sudo systemctl enable nginx
ファイルを置くディレクトリ
/nas/wwwに置くとする
sudo mkdir /nas/www sudo chmod 777 /nas/www
とりあえず誰てもアクセスできる共有フォルダとする
/etc/samba/smb.conf の最後に追加。
[www] comment = www path = /nas/www writable = yes guest ok = yes guest only = yes
設定後Samba再起動
sudo systemctl restart smbd
nginx設定
/etc/nginx/sites-available/default を編集
serverブロックにある root を /nas/www に変更する
root /nas/www;
ついでにPHPインストール
sudo apt install php php-fpm php-common php-gd php-mbstring php-json php-xml
/etc/nginx/sites-available/default にPHPの定義があるので、下のようにコメントを外して編集する
# pass PHP scripts to FastCGI server # location ~ \.php$ { include snippets/fastcgi-php.conf; # With php-fpm (or other unix sockets): fastcgi_pass unix:/var/run/php/php7.4-fpm.sock; # # With php-cgi (or other tcp sockets): # fastcgi_pass 127.0.0.1:9000; }
設定後nginx再起動
sudo systemctl restart nginx